③ 推敲・校正のチェック術
書いた後にグッと良くなる【推敲・校正のチェック術】
― 「書く」と「直す」は別の作業。読みやすさは、直す段階で決まる ―


なぜ「推敲」が必要なのか

文章は、書いただけでは完成しません。
初心者ほど「一気に書き上げたものが、そのまま完成原稿」だと思いがちですが、
プロほど「書いた後に直す」ことに時間をかけています。

書いているときは、頭の中の勢いで文字を並べてしまいます。

だから、書いた直後の文章には、
自分では気づきにくいクセや読みにくさが必ず残る文章になりがちです。

そこで必要になるのが「推敲(すいこう)」です。
推敲とは、書いた文章を読み返して、読みやすく直していく作業のこと。

この教材では、推敲のときにチェックすべきポイントを、3つの観点に整理して紹介します。

 1.文のねじれを防ぐ … 意味が正しく伝わる骨格にする
 2.冗長を削る … ムダを削ってスッキリさせる
 3.表記とリズムを整える … 見た目と読み心地を揃える

「書く心構え」編で学んだこと(一文は短く、語尾を変える、など)を意識して書いた原稿を、
さらにこの3観点で磨き上げる、というイメージです。

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。


観点① 文のねじれを防ぐ
まずは、文の「骨格」を整えるグループです。
ここがゆがんでいると、どれだけ言葉が綺麗でも意味が伝わりません。

1-1. 主語はできるだけ文頭に出す

主語が文の後ろのほうにあると、何の話なのかが最後まで分からず、読者は読みにくさを感じます。

✗ 悪い例
 ホームページのユーザー数を計測するために使われるアクセス解析ツールは、
 マーケティング担当者にとって欠かせない存在です。
 → 「アクセス解析ツールは」という主語が後ろにあり、途中まで何の話か分かりません。

◯ 改善例
 アクセス解析ツールは、ホームページのユーザー数を計測するために使われ、
 マーケティング担当者にとって欠かせない存在です。

主語を文頭に出すと、「何の話か」がすぐ分かります。
※ 絶対のルールではないので、後ろに置くほうが自然な場面では柔軟に。
基本は「主語は前へ」と覚えておきましょう。

1-2. 主語と述語を対応させる

主語と述語がかみ合っていない文を「文のねじれ」と言います。

✗ 悪い例
 私の仕事は、医療関連の記事を執筆します。
 → 主語と述語だけ取り出すと「仕事は…執筆します」となり、おかしいですね。
◯ 改善例
 私は、医療関連の記事を執筆します。
 もしくは:私の仕事は、医療関連の記事を執筆することです。

文に違和感を覚えたら、「主語」と「述語」だけを抜き出してみてください。
かみ合っていれば、ねじれはありません。

あわせて:主語と述語で同じ言葉を使わない
 その資料は、昨年度の営業利益が記載された資料です。(「資料は…資料です」)
 その資料には、昨年度の営業利益が記載されています。

「〇〇は〇〇です」と同じ言葉が頭とお尻に来る文(トートロジー)は、
幼稚な印象を与えます。言い換えましょう。

1-3. 修飾語と被修飾語は近づける

「説明する言葉(修飾語)」と「説明される言葉(被修飾語)」が離れていると、
どこにかかるのか分からなくなります。

✗ 悪い例
 これは、最新の文書チェック機能つきのパソコンです。
 → 「最新の」が、文書チェック機能なのか、パソコンなのか分かりません。

◯ 改善例
 (機能が最新なら)このパソコンは、最新の文書チェック機能を搭載しています。
 (パソコンが最新なら)これは、文書チェック機能つきの最新のパソコンです。

修飾語は、説明したい言葉のすぐ近くに置く。
読点の位置も工夫して、読者が誤解しないようにしましょう。

観点② 冗長を削る

次は、ムダな言葉を削ってスッキリさせるグループです。
「丁寧に書こう」とするほど、言葉は増えて重くなります。
削れる言葉は、思いやりだと思って削りましょう。

2-1. 一文の中で同じ言葉を使わない

同じ単語が一文に何度も出てくると、くどい印象になります。

✗ 悪い例
 Macの値段は、他のパソコンの値段に比べて高いですが、利便性や耐用年数を考えれば値段以上のメリットがあります。
 → 「値段」が3回。くどいですね。

◯ 改善例
 Macの値段は他のパソコンに比べて高いですが、利便性や耐用年数を考えればコスパは悪くありません。

省けるなら省く。どうしても続くなら言い回しを変える(「値段以上のメリット」→「コスパ」)

特に注意:「こと」「もの」

  ✗ 文法のことを勉強することで、読みやすい記事を書くことができるようになります。(「こと」が3回)

  ◯ 文法を勉強すれば、読みやすい記事を書けるようになります。

 「こと」「もの」はどんな文にも使えて便利な分、重複しやすい言葉です。
 使いすぎていないか必ずチェックしましょう。

2-2. 「〜の」を連続して使わない
助詞の「の」が続くと、一気に読みにくくなります。

✗ 悪い例
 来年リリースの当社の営業ツールの売上管理機能の内容を紹介します。(「の」が4回)

◯ 改善例
 来年リリースする当社営業ツールの売上管理機能について紹介します。(「の」は1回)
 目安は「『の』の連続は2回まで」。3回以上続いたら要注意です。

2-3. 冗長表現を避ける
無駄に長く、伝わりにくい言い回しを「冗長表現」と言います。
代表的な3つを覚えましょう。

(1) 「〜という」
 ✗ あまりに高い目標というのは、挫折の原因につながってしまいます。
 ◯ あまりに高い目標は、挫折の原因につながります。
(2) 「〜することができます」
 ✗ こちらのサービスは、当社のホームページより登録することができます。
 ◯ こちらのサービスは、当社のホームページより登録できます。
(3) 二重否定
 ✗ 上司があなたの意見に反対しないとも限りません。
 ◯ 上司は、あなたの意見に反対するかもしれません。

※ いずれも絶対NGではありません。本当に強調したい場面では、あえて使うこともあります。
ただ、初心者のうちは使いすぎる傾向があるので、「最小限に」を意識しましょう。

2-4. 二重表現に注意
同じ意味の言葉を重ねてしまうのが「二重表現」です。冗長になるので避けましょう。

「約」と「ほど」のように、片方だけで意味が足りるものは、ついやりがちです。
読み返して気づけるようにしておきましょう。

観点③ 表記とリズムを整える

最後は、文章の「見た目」と「読み心地」を揃えるグループです。
内容が同じでも、ここを整えるだけで、ぐっとプロらしい原稿になります。

3-1. 不要な接続詞を削る
「なぜなら」「そのため」「しかしながら」などの接続詞は、使いすぎると冗長になります。

✗ 悪い例
 人生の計画を立てるのは大切です。
 なぜなら、人生の時間は有限だからです。

 そのため、現状に不満がなくても、後悔につながる可能性もあります。
 しかしながら、将来についてじっくり考える人は少ないでしょう。

 → 接続詞が3つ。読んでいて重たいですね。

◯ 改善例
 人生の計画を立てるのは大切。
 人生の時間は有限だからです。

 現状に不満がなくても、後悔につながる可能性もあります。
 しかしながら、将来についてじっくり考える人は少ないでしょう。

接続詞がなくても意味は通じます。
もちろん接続詞自体が悪いわけではありません。
「不要なものを削る」という意識でOKです。

3-2. 読点(、)を使いすぎない

読点が多すぎると、リズムが途切れてスラスラ読めません。
目安は「一文に読点は1〜2個まで」
そして、もし読点を3個以上打たないと意味が通らない文は、そもそも文が長すぎる可能性が高いです。
その場合は読点を減らすより、文を2つに分けましょう。

3-3. 漢字の閉じ・開きを意識する

漢字で書くことを「閉じる」、ひらがなで書くことを「開く」と言います。
漢字が多いと、文章は堅苦しく見えます。
一般的に「開く」ことが多い言葉は、ひらがなにしましょう。

開くことが多い言葉の例

※ 明確なルールはありません。開く言葉は自分のルールで決めていきましょう。

3-4. 記事全体で表記を統一する

同じ言葉の書き方がバラバラだと、読者に違和感を与えます。
これを「表記揺れ」と言います。

統一すべきポイント
 ・漢字/カタカナ/ひらがな:「犬・イヌ・いぬ」のどれで書くか
 ・送りがな:「引っ越し/引越し」など
 ・固有名詞:「Google/グーグル」など
 ・数字:半角/全角(基本は半角が多い)
 ・カタカナ語:「ユーザー/ユーザ」など(一度決めた表記で統一)

一冊・一記事を通して、最初に決めた表記で最後まで揃えましょう。

3-5. 「〜たり、〜たり」は繰り返して使う

「〜たり」は、本来2回以上セットで使うのが正しい日本語のルールです。

✗ 悪い例
 休日はゲームをしたり、漫画を読んで過ごすようです。
 → 2回目の「たり」が抜けています。

◯ 改善例
 休日はゲームをしたり、漫画を読んだりして過ごすようです。

※ 例外として、単独で使えるケースもあります。
「休日はゲームをしたりして過ごすようです」のように、他にも似たことをしている、と暗にほのめかす用法です。
複数の具体例を並べるときは繰り返し、具体例が1つだけのときは単独でもOK、と覚えておきましょう。

推敲チェックリスト

書き終えた原稿を、この順番で読み返してみましょう。

① 文のねじれを防ぐ
・主語は文頭に近い位置にあるか
・主語と述語はかみ合っているか(抜き出して確認)
・主語と述語で同じ言葉を使っていないか
・修飾語は、説明したい言葉の近くにあるか

② 冗長を削る
・一文の中で同じ言葉を繰り返していないか(特に「こと」「もの」)
・「〜の」が3回以上続いていないか
・「〜という」「〜することができます」「二重否定」を使いすぎていないか
・二重表現(まず最初に、必ず必要、など)はないか

③ 表記とリズムを整える
・不要な接続詞を削れないか
・一文の読点は1〜2個に収まっているか
・開いたほうがいい漢字を閉じていないか
・表記揺れはないか(数字・カタカナ・送りがな)
・「〜たり」は正しく繰り返しているか

まとめ

推敲のコツは、たった一つです。

 「書く」と「直す」を、別の作業として分ける。

書くときは、勢いに任せて最後まで書ききる。
そして、いったん手を止めてから、今日の3観点(ねじれを防ぐ・冗長を削る・表記を整える)で読み返す。
この「直す」工程を入れるだけで、あなたの原稿は見違えるほど読みやすくなります。

最初は12項目すべてを意識するのは大変かもしれません。
でも、推敲を繰り返すうちに、書いている最中から自然と気をつけられるようになります。
まずは書き上げた原稿を、声に出して一度読んでみてください。 つっかえた場所こそ、直すべき場所です。