④ 本の設計図テンプレート
読者を最後まで連れていく【本の設計図】テンプレート
― ピークエンドの法則で「読み終えた満足感」をデザインする ―
このテンプレートの使い方
ここまでの教材で、あなたは「一文一文を読みやすくする技術」と「書いた後に整える推敲の技術」を学んできました。
でも、どれだけ一文一文が美しくても、それだけでは「読んでよかった」と思ってもらえる本にはなりません。
なぜなら、読者が本の印象を決めるのは、全部を平均した点数ではないからです。
ここで登場するのが「ピークエンドの法則」です。この法則をひとことで言うと、
人は、一番盛り上がった瞬間(ピーク)と、終わり方(エンド)で、その経験全体の印象を決める。
というものです。
昔から「終わりよければすべてよし」ということわざがありますよね。ピークエンドの法則は、それに「ピーク(最高潮)も大事だよ」と一言加えたもの、と覚えておくとわかりやすいです。
このテンプレートでは、この法則を本一冊の設計に落とし込みます。上から順番に、空欄を埋めていくだけで、読者を最後まで連れていく一冊の骨組みができあがります。考え込まず、まずは穴を埋めてみてください。
まず知っておきたい「ピークエンドの法則」
どんな法則なのか
これは、心理学者であり経済学者でもあるダニエル・カーネマン博士が提唱した法則です。(博士は行動経済学という分野で、2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。)
博士はある実験をしました。被験者を2つのグループに分け、不快な音を聞かせます。
・第1グループ:不快な音を、ずっと聞かせる
・第2グループ:第1グループと同じ不快な音を同じ時間聞かせた後、少しだけマシな音を追加で聞かせる
第2グループのほうが、トータルでは長く不快な音を聞いています。ふつうに考えれば、第2グループのほうが「つらい経験だった」と感じるはずです。
ところが結果は逆でした。長く聞かされた第2グループのほうが、「不快だった」と評価した人が少なかったのです。
理由はシンプルです。第2グループは、終わりがちょっとマシだったから。人は経験の合計時間ではなく、「ピーク」と「終わり」だけで全体をジャッジしていたわけです。
なぜ電子書籍に効くのか
これは本にもそのまま当てはまります。読者は、あなたの本を読み終えたとき、全ページの内容を採点しているわけではありません。一番「おっ」となった場所と、読み終わりの後味。
この2点で「いい本だった/いまいちだった」を決めています。
だからこそ、本の設計では次の2か所に最も力を注ぎます。
・ピーク:読者の感情が最高潮になる場所をどこに作るか
・エンド:読み終わりを、どんな後味で締めくくるか
このテンプレートは、この2点を軸に組み立てられています。
本の全体像(完成イメージ)
これから埋めていく設計図の全体像です。各パートが「感情の温度」をどう動かすかを意識してください。

ポイントは⑤〜⑦の流れです。ピーク(高揚)→ 注意(クールダウン)→ おわり(着地) という温度設計になっています。
なぜわざわざピークの後に注意喚起を挟むのか。それは、ピークが強すぎると、終わりが物足りなく感じてしまうという落とし穴を避けるためです。(カーネマンの実験の裏返しですね。終わりがしぼむと、全体の印象まで下がってしまう。)
未来提示で舞い上がった読者を、注意喚起でいったん地に足をつけさせ、おわりにで前向きに送り出す。この温度の波が、読了後の満足感を最大にします。
執筆の進め方 ― 「読む順」と「書く順」は違う
ここで、とても大事な注意点があります。
上の全体像(①はじめに → ⑦おわりに)は、あくまで読者が読む順番です。
あなたが書く順番は、これとは違います。
初心者がやってしまいがちな失敗が、「①はじめに」から書き始めてしまうこと。
これは、ほぼ100%あとから書き直しになります。
なぜ「はじめに」を最初に書いてはいけないのか
理由はシンプルです。本を書き進めていくと、最初に構想していた内容から、
必ずと言っていいほどズレていくからです。
書く前に思い描いていた流れと、実際に書き上がった本文は、たいてい違うものになります。
それなのに先に「はじめに」を作り込んでしまうと、本文との間に食い違いが生まれ、
・本文との内容にズレが出る
・解決策の輪郭がぼやける
・結局、あとから全部書き直しになる
ということが起こります。
正しい執筆順:本文 → おわりに → はじめに
おすすめの執筆順は、次のとおりです。
1.コンセプトだけ決める(メモ程度でOK)
2.本文(各章のノウハウ)を書く
3.おわりにを書く
4.最後に、はじめにを書く
本文を書き終え、おわりにで全体を振り返ったあとに、ようやく「この本は何を伝えたい本なのか」がはっきり言語化できるようになります。その状態で「はじめに」を書くから、本文と一貫した、読者に刺さる序章が完成するのです。
「はじめに」を最後に書くと、本文で実際に書いた内容をそのまま要約・予告できるので、最初から最後まで流れがきれいにつながります。
⚠️ ただし「コンセプト」だけは最初に決める
本文を書き始める前に、「はじめに」のコンセプトだけはざっくり決めておいてください。
完璧な原稿は不要で、メモ書きレベルで十分です。
【記入欄】最初に決めるコンセプトメモ
・何を伝える本か(テーマ):
・読み終えた読者がどうなるか(ベネフィット):
・誰に向けた本か(読者像):
・どんな順番で伝えるか(章のおおまかな流れ):
🔗 このコンセプトメモは、ゼロから考えなくてOK
「何を伝え・読者がどうなるか」は「コンセプト設計」編で、
「誰に」は「ペルソナ設計」編で、すでに固めているはずです。
(ペルソナ設計の末尾で確定したコンセプト一文が、そのまま土台になります。)
それをここに転記するだけ。まだなら、先にその2つの教材で土台を固めてから戻ってきてください。
これさえ決めておけば、本文を書く間、方向性がブレずに済みます。
設計図と執筆順の対応

つまり、この設計図は「完成した本を上から眺めた地図」です。
実際に筆を進めるときは、コンセプトメモ → 本文 → おわりに → はじめにの順で書く、と覚えておいてください。
① はじめに ― PASTORフォーミュラで引き込む
「はじめに」は、試し読みに表示される最重要パートです。
ここで「自分のための本だ」と思わせれば、最後まで読まれる確率が一気に上がります。
📌 書く順の注意 このパートは設計図の先頭にありますが、
実際に書くのは一番最後です(前章「執筆の進め方」参照)。
本文とおわりにを書き上げてから、最後にここを埋めてください。
先にコンセプトメモだけ決めておけば大丈夫です。
PASTORの型に沿って、上から埋めていきましょう。
P(Problem):読者の悩みを言語化する
読者が頭の中で抱えているモヤモヤを、こちらが先に言葉にしてあげます。
A(Amplify/共感):「自分も同じだった」
過去の自分と読者を重ねます。すごい人ではなく「かつてあなたと同じだった人」として登場します。
S(Story/Solution):失敗と転機を語る
ここが一番、熱量を込めて書く場所です。「ダメだった過去 → きっかけ → 変わり始めた瞬間 → 解決策の輪郭」の順で。
T(Testimony/証言):他の人の成果
「自分だから成功したのではなく、誰でも再現できる」と伝えるパートです。
⚠️ 1冊目で事例がない場合は、ここは飛ばしてOK。Sの解決策からそのままOへ進んで問題ありません。事例ができたら必ず入れましょう。
O(Offer):本書で何が得られるか
ここで初めて本の中身に触れます。読者の「で、結局何が書いてあるの?」が最高潮の場所です。
R(Response):最後の一押し
読者の行動を促し、次のページへつなげます。
① の続き ― 著者紹介(実績先出し→共感→読み方ガイド)
PASTORの後に続けます。実績を先に出して信頼を得てから、弱さを見せて親しみを生みます。
【記入欄】著者紹介を順番に埋める
・① インパクトのある実績:
・② かつての自分の悩み(弱さの開示):
・③ ビフォーの状況(具体的に):
・④ 転機・学び・行動:
・⑤ 今の状態と、なぜこの本を書いたか:
・⑥ 読み方ガイド(章構成の案内):
「この人みたいになりたい」と「自分にもできそう」を同時に感じさせるのが狙いです。
② 第1章 ― 著者ストーリーで共感・ファン化
ここは「ノウハウ」ではなく「人」を見せる章です。あなたの過去のストーリーを通して、価値観や人柄を伝え、読者に親近感を持ってもらいます。「はじめに」のSパートをさらに深く、エピソードとして展開するイメージです。
【記入欄】第1章で伝えたいこと
・読者に共感してほしい体験:
・その体験から得た価値観・信念:
・読者に「この人を応援したい」と思わせる人柄の見せどころ:
ポイント:上手に書こうとしないこと。「こんなことがあったよ」と話しかけるように書くだけで、
読者の心に届きます。
③ 第2章 ― 基礎知識(なぜ必要か/そもそも何か)
ノウハウに入る前に、土台を固める章です。
「なぜそれが必要なのか」「そもそも〇〇とは何か」を説明し、読者を納得させます。
【記入欄】第2章で固める前提
・そもそも〇〇とは(定義):
・なぜそれが必要なのか(理由):
・これを知らないとどうなるか:
※ 必要であれば、ここに参考情報・データを組み込んでも構いません。
④ 各章 ― ノウハウを授ける
ここから本編のノウハウです。
1つの章につき1テーマを基本に、PREP法(結論→理由→具体例→結論)で書いていくと、説得力が出ます。
【記入欄】ノウハウの章を洗い出す(学ぶ順番に並べる)
・第3章:
・第4章:
・第5章:
・(必要なだけ追加)
ポイント:難しい順ではなく、読者が達成しやすい順に並べると、読者の「できた」が積み上がっていきます。
⑤ ピーク ― 未来提示で感情を最高潮に【最重要】
ここがこの本のピークです。
すべてのノウハウを学び終えた直後、読者の満足度と期待が最も高まっているこのタイミングで、
「ここまで実践したあなたは、こんな未来を手に入れられます」
と、明るい未来を具体的に見せます。
【記入欄】読者が手に入れる未来(できるだけ具体的に)
・ノウハウを全部実践したあと、読者の生活はどう変わるか:
・数字・場面・感情を使って、ありありと描写する:
例:3か月後、あなたは自分の本がランキングに並ぶのを、通勤電車の中でスマホで眺めているかもしれません。
ポイント:抽象的な「成功できます」では弱いです。読者の頭の中に映像が浮かぶように、
場面として描いてください。ここで読者の感情を最高潮に持っていくことが、本全体の評価を決めます。
⑥ 注意喚起 ― クールダウンで誠実さを見せる
ピークの直後に、あえて「注意点・デメリット」を伝える章を置きます。
ここまで良いことを書いてきたぶん、「とはいえ、こういう落とし穴もあります」と誠実に伝えることで、
信頼が一段深まります。
こうすると、注意喚起すらも「読者を成功に近づける親切」に変わり、
ピークの温度を保ったまま「おわりに」へ渡せます。
⑦ おわりに ― エンドで満足させて送り出す
最後のパートです。ピークエンドの法則の「エンド」を担う、本の印象を決定づける場所です。
ここで失速すると、どれだけ本編が良くても「なんとなく物足りない本」になってしまいます。
終わりこそ、力を抜いてはいけません。
ポイント:最後の一文は、読者が本を閉じたあとも心に残る言葉に。「読んでよかった」という後味が、レビューと次の一冊につながります。
チェックリスト ― 設計図が完成したら
埋め終えたら、ピークエンドの視点で最終チェックをしましょう。
・ピークはどこか、ひとことで言えるか?(⑤の未来提示)
・そのピークは、読者の頭に映像が浮かぶほど具体的か?
・ピークの直後の注意喚起は、最後にすくい上げて終わっているか?
・おわりには、振り返り・感謝・後押し・前向きな締め、がそろっているか?
・最後の一文を読んだ読者は、どんな気持ちで本を閉じるか、想像できるか?
・全体の感情カーブが「高揚 → クールダウン → 着地」になっているか?
まとめ
ピークエンドの法則が教えてくれるのは、シンプルな真実です。
読者は、本のピークと終わりで、その一冊の価値を決める。
だからこそ、
1.ノウハウを学び終えた直後に、未来提示というピークを作る
2.注意喚起でいったんクールダウンさせ、ピークが浮かないように整える
3.おわりにで、前向きな後味とともに送り出す
この設計ができれば、あなたの本は「最後まで読まれる本」から、
「読み終わったあとに人に勧めたくなる本」へと変わります。
文章の目的は「読ませること」ではなく、「読み終えたあとに、よかったと思ってもらうこと」。
このテンプレートの空欄を、あなたの言葉で埋めていってください。